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量子コンピュータは何でできている?
Vol.1――装置・材料・冷却・電力の見取り図

じいじと、冷却・配線・光学部品の概念を並べたイラスト。
AIで制作した概念イラストで、実機や企業の施設を再現したものではありません

量子コンピュータというと、金色の配線が何層にも垂れた装置を思い浮かべる方も多いかもしれません。では、あの装置のどこが計算し、何が冷やし、どんな材料が使われているのでしょう。珍しい鉱石がないと、量子コンピュータは作れないのでしょうか。

この特集では、小さな量子ビットから周りの設備までを見渡します。初回は全体の地図です。方式ごとの材料、冷却、制御、資源の話を結びつけ、続編で一つずつ掘り下げていきます。

先に覚えたいのは、方式が違えば必要な装置も材料も変わる、ということです。金属回路を冷やす方式も、真空中の原子を光で操る方式もあります。電力、冷媒、量子ビットの材料はそれぞれ役割が違い、「量子コンピュータ共通の特別な燃料」があるわけではありません。

確認基準日:2026年10月20日。企業・研究機関の公開資料と論文の要旨を読んだ解説です。工場・実機の見学、材料分析、消費電力の実測はしていません。各社の全機種の部品表や調達量を網羅したものではありません。株式の売買を勧める記事ではありません。

1.本体は「計算する部分」と、それを支える仕組みの組合せ

量子ビットは、量子情報を持たせる部分です。しかし量子ビットだけを置いても、計算の指示や結果の読み取りはできません。IBMの構成解説でも、量子プロセッサのほかに、制御する電子回路と通常のコンピュータが登場します。[1]

見取り図 01

装置を六つの役割に分けて見る

計算・操作・読み取り・環境・接続・電源などを独立した絵で表す役割の概念図。
図の読み方

上段の左から:計算する/操る/読み取る。

下段の左から:環境を保つ/つなぐ/動かす。

計算する量子ビット・量子プロセッサ
操るマイクロ波・レーザー・制御回路
読み取る増幅器・光検出器・計測回路
環境を保つ冷却・真空・遮蔽など
つなぐ配線・光の経路・接続部品
動かす電源・通常の計算機・ソフトウェア
役割を整理した概念図です。方式により構成は異なり、一つの部品が複数の役割を担う場合もあります。
図の根拠:第1章の本文・出典[1]

役割を理解するための概念図です。全方式が同じ六つの装置を一個ずつ持つという意味ではなく、一つの部品が複数の役割を担う場合もあります。

ここから分かるのは、量子ビットの個数だけを見ても装置全体は分からない、ということです。信号をどう運び、どの環境を守り、どう読み出すかまで見ると、部品の名前がつながってきます。通常の計算機との分担については、スパコンと組み合わせる記事でも扱っています。

2.方式別に見ると、材料と装置の違いが分かる

見取り図 02

情報を担うものが変わると、支える装置も変わる

方式や研究例ごとの違いを、回路・原子・光・結晶などの別々のカードで表したイラスト。
図の読み方

上段の左から:超伝導回路/イオントラップ/中性原子。

下段の左から:半導体スピン/光・フォトニクス/ダイヤモンドの欠陥。

ダイヤモンドの例は量子通信メモリーの研究です。

回路の方式超伝導回路電気回路 + 極低温・マイクロ波
原子を使う方式イオントラップイオン + トラップ・光による制御
原子を使う方式中性原子原子 + 光ピンセット・レーザー
半導体の方式半導体スピン電子などのスピン + 量子ドット・低温設備
光の方式光・フォトニクス光の量子状態 + 光回路・検出器
通信メモリーの研究例ダイヤモンドの欠陥結晶中の欠陥 + 光を結びつける構造
本文に挙げた方式・研究例の比較図です。全機種共通の材料表や技術の順位を示す図ではありません。
図の根拠:第2章の表・出典[1]・出典[2]・出典[4]・出典[5]・出典[6]・出典[7]・出典[8]・出典[9]・出典[10]

次の表は、主な方式・研究例を比べるためのものです。材料名は使用例であり、各方式の全機種に共通する買い物リストではありません。企業名は資料の例で、技術の優劣や採用の推奨を表しません。

方式・対象量子情報を担うもの支える装置・部品の例材料や環境を見るポイント
超伝導回路超伝導の電気回路希釈冷凍機、マイクロ波制御、配線、読み出し回路アルミニウム、ニオブ、タンタルなどの回路研究。材料と極低温環境を一緒に見る。[1][2][3]
イオントラップ電荷を持つ原子=イオン電極を持つトラップ、光による制御・冷却QuantinuumのH1の例では、イッテルビウムが量子ビット、バリウムが冷却を助ける。[4]
中性原子電荷の釣り合った原子原子を捕まえる光ピンセット、レーザー制御・冷却QuEraはルビジウムを使用。原子の温度と装置の冷却方式を区別する。[5]
半導体スピン半導体中の電子などのスピン微細加工した量子ドット、電極、制御・読み出し、低温設備同位体を調整したシリコンの研究例がある。「半導体だから室温」とは限らない。[6][7] 理研が2026年10月15日に発表した研究段階の例では、共通の高周波電極でシリコン量子ビットを同時に操作し、3個同時では各量子ビット99.99%超、5個すべて同時では約99.9%の忠実度(操作の正確さ)を実現しました。理研は、この共通電極を使う方式には制御配線の本数を減らせる利点があると説明しています。[16]
光・フォトニクス光の量子状態光源、光回路、変調器、光検出器薄膜ニオブ酸リチウムの部品例がある。超伝導検出器を組み合わせる設計では冷却も必要。[8][9]
ダイヤモンドの欠陥結晶中の欠陥に関わる状態人工ダイヤモンド、光を結びつける構造などここで確認した例は量子通信のメモリー研究。完成した計算機の性能実証と同一視しない。[10]

超伝導は「どう量子ビットを作るか」に関わる区分であり、アニーリングやゲート方式は「どう計算するか」に関わる区分です。そのため、材料の異なる方式として表に一行加えることはしません。方式の基本は既存の方式入門へ戻れるようにしています。

新しい方式は、材料名と達成段階を別々に確認する

Microsoftは2025年のMajorana 1の発表で、インジウムヒ素(InAs)とアルミニウム(Al)を組み合わせた装置構造を説明しています。ここで確認するのは、同社が示した材料と構造の話です。材料名を知っただけで、誤りに強い大規模計算や商用化の達成まで確認したことにはしません。新しい方式ほど、企業の主張、論文で測ったこと、その後に確認されたことを分けて追います。[11]

3.「燃料」「冷媒」「材料」「電力」を混ぜない

見取り図 03

「使う」の中身を四つに分ける

電力・冷媒・機能材料・製造資材の役割を分けるイラスト。
図の読み方

左から:電力/冷媒/機能材料/製造工程の資材。

動かすエネルギー、熱を取り去る物質、機能を担う材料、加工用資材を分けます。

運転電力装置を動かすエネルギー
冷却冷媒熱を取り去るための物質
機能機能材料回路や量子ビットを作る・担う物質
製造製造工程の資材原料や加工のために使う資材

ヘリウム混合物は冷却用。計算のために燃やす燃料ではありません。

用途を分ける概念図です。投入量・補充量・交換頻度は、この分類だけでは分かりません。
図の根拠:第3章の本文・冷媒の例は出典[2]

ガソリン車のように燃料を燃やして走る機械を想像すると、「ヘリウムで量子コンピュータが動く」という説明は誤解を生みます。希釈冷凍機のヘリウムは冷却のために使うもので、計算のために燃やす燃料ではありません。

  • 電力:冷却装置、レーザー、制御電子回路、計算機などを動かすエネルギーの供給。
  • 冷媒・冷却用の物質:例えば希釈冷凍機のヘリウム混合物。熱を取り去る役割。
  • 機能材料:回路、光回路、量子ビットなどを作る、あるいは担う物質。
  • 製造工程の資材:装置を作るための原料や加工用資材。運転時に使う物質とは分けて考える。

同じ「使う」という言葉でも、初めに装置へ組み込むのか、循環させるのか、保守で補うのか、製造の途中で使うのかが違います。投入量や交換頻度は製品・設備ごとに確かめる情報であり、物質名だけから消費量を推定しないことが大切です。

4.なぜ冷凍機が大きい? ヘリウムは使い捨て?

見取り図 04

ヘリウム混合物は冷却のために循環する

冷却用の循環と、周囲の配線を抽象的に表す概念図。実機の配管図ではありません。
図の読み方

中央の矢印:冷却用の循環。周囲の絵:冷却と配線のイメージ。

ヘリウム3とヘリウム4の混合物は冷却用です。実機の配管図ではありません。

希釈冷凍機の例ヘリウム3 + ヘリウム4閉じた循環系で冷却に使う冷却用として循環させる/補充や保守が一切不要とは限らない
配線極低温部と室温の電子回路をつなぐ
部材金めっきした銅などの例。外観だけでは材質は分からない
循環の意味を表す概念図です。実機の配管、流れの順序、温度段、混合物の量は示していません。
図の根拠:第4章の本文・出典[2]・出典[12]・出典[13]

超伝導回路では、とても低い温度の環境を作ります。Blueforsは、ヘリウム3とヘリウム4の混合物を閉じた循環系で用い、希釈という過程によって極低温の冷却を続ける装置を説明しています。ヘリウム3とヘリウム4は、同じ元素でも原子核の中身が異なる「同位体」です。[2]

ここでの「閉じた循環系」は、計算のたびにヘリウムを燃やして捨てる仕組みとは違います。ただし、補充や保守が一切不要だと保証する意味でもありません。

極低温部と室温の電子回路を結ぶ配線にも工夫が必要です。Blueforsの説明には、ニオブ・チタン系や銅・ニッケル系の配線の測定例、金めっきした銅の部材の例が出てきます。金色の外観を見ても、全体が純金でできているとは判断できません。部品ごとに材質と役割を調べる必要があります。[12][13]

5.レーザーを使う方式でも「冷やす」は大切

見取り図 05

同じ「冷やす」でも、対象と方法を分ける

原子の冷却と光を検出する部分の冷却を別々のカードで表したイラスト。
図の読み方

左から:中性原子の例(レーザーで原子の動きを抑える)/イオントラップの例(2種類のイオンを組にする)/光回路の研究例(検出器を冷やす)。

原子の冷却と、希釈冷凍機による冷却は方法が異なります。

中性原子の例QuEra:レーザーで原子の動きを抑える。希釈冷凍機による冷却とは方法が異なる。
イオントラップの例2022年時点のH1の説明:バリウムを冷やし、イッテルビウムと組にして動きを抑える。
光回路の研究例光を使う設計でも、組み合わせる超伝導検出器には冷却が必要。
本文で確認した企業・研究設計の例です。全機種に共通する冷却条件を示すものではありません。
図の根拠:第5章の本文・出典[4]・出典[5]・出典[9]

QuEraは、ルビジウム原子を光ピンセットで捕まえ、レーザーで原子の動きを抑えて冷やす仕組みを説明しています。一方で、同社の方式は大きな極低温冷却設備を必要としないとしています。これは矛盾ではありません。原子の動きを抑える冷却と、希釈冷凍機で低温の環境を作ることは別だからです。[5]

イオントラップでも冷却用の仕組みが登場します。Quantinuumの2022年のH1技術の説明では、バリウムをレーザーで冷やし、イッテルビウムと組にして両方の動きを抑える例が示されています。これは同社の当時の機種の例で、全社・全機種が同じ元素を使うとは一般化しません。[4]

ただし、光を計算に使う方式だから、冷却設備が一切いらないとも限りません。薄膜ニオブ酸リチウムを使う光回路と超伝導検出器を組み合わせる研究設計があります。光の通り道と、光を検出する部分の動作条件を、それぞれ見る必要があります。[9]

6.希少な鉱石は必須? 答えは材料と方式ごとに違う

見取り図 06

原料があるだけでは、使える部品になるとは限らない

原料、組成の調整、薄膜や結晶、加工、検査の論点を並べた概念図。
図の読み方

左から:原料・資源/純度・同位体/薄膜・結晶/微細な回路/接続・検査。

使える部品になるまでに、別々の工程があります。

  1. 原料・資源何から材料を取り出すか
  2. 純度・同位体どの組成に調整するか
  3. 薄膜・結晶必要な形にどう作るか
  4. 微細な回路どのように加工するか
  5. 接続・検査部品としてどう確かめるか

レアアースの使用例があることと、全方式で同じ希少鉱石が必須であることは別です。

本文の工程上の論点を並べた概念図です。材料ごとの実製造工程や、確定した供給経路を示すものではありません。
図の根拠:第6章の本文・出典[4]・出典[6]・出典[8]・出典[14]

珍しい物質を使う例はあります。ただし「量子コンピュータには、特定の希少鉱石が必ず大量に必要」と一括りにはできません。一般的な元素でも、量子装置向けに純度、同位体、薄膜、表面を制御することが重要になる場合があります。

レアアースと、それ以外の材料

イッテルビウムはランタノイドに属する元素で、レアアースの仲間です。QuantinuumのH1の例では、この元素のイオンが量子ビットとして使われます。だからといって、超伝導回路や光方式も同じ元素を必要とするとはいえません。ルビジウム、シリコン、ヘリウムは、いずれもレアアースではありません。[4][14]

「レアメタル」「重要鉱物」は、供給上・政策上の区分として語られることもあります。元素の分類であるレアアースと同じ一覧ではありません。資源の話を読むときは、どの国・機関の、いつの分類なのかも確かめます。

材料・資源今回確認した使われ方必要性を読む際の注意
アルミニウム・ニオブ・タンタル超伝導回路の材料研究の例[3]すべての機械が、これらの候補材料を全部まとめて使うわけではない。
シリコン28を多くした材料半導体スピンの研究例[7]元素の珍しさだけでなく、同位体組成の調整が論点。
イッテルビウム・バリウムH1で量子ビットと冷却を担う例[4]二つの物質の役割も違う。全機種共通ではない。
ルビジウムQuEraの中性原子量子ビット[5]原子を使う例であり、鉱石を燃やす話ではない。
ニオブ酸リチウム光を制御する薄膜・光回路[8][9]ニオブ金属そのものと同じ材料ではない。全ての光方式に必須ともいえない。
人工ダイヤモンド欠陥を利用する量子通信メモリーの研究[10]天然の宝石をそのまま組み込む話と区別。計算機の実証へ拡張しない。
ヘリウム3・ヘリウム4希釈冷凍機の循環する混合物[2]冷却用。全方式共通の燃料ではない。

「鉱石がある」と「使える部品が作れる」は別

鉱石や原料から材料を取り出すこと、純度や同位体組成を調整すること、薄膜や結晶を作ること、微細な回路へ加工すること、接続して検査することは、別々の工程です。Intelは同位体を調整したウエハーや、半導体技術を使うスピン量子ビットの研究を説明しています。QCiは薄膜ニオブ酸リチウムの製造・加工サービスを説明しています。原料の有無だけでは、量子装置用の品質で供給できるかまでは分かりません。[6][8]

米国のフェルミ国立加速器研究所(Fermilab)が中心となる研究センターSQMSは、22個の超伝導量子ビットを7種類の方法で調べた研究を2026年10月1日に紹介しました。表面の酸化膜の厚さ、加工した側面の角度、基板に掘った溝の深さと、量子ビットが「1」の状態から、ひとりでに「0」へ戻ってしまうまでの時間(エネルギー緩和時間)のばらつきとの関連(いっしょに変わる傾向)を報告しています。材料を調べる担当者にはエネルギー緩和時間を知らせず、測定後に両者を比較しました。[17]

調べた量子ビットは、Fermilab、米国立標準技術研究所(NIST)、Rigetti Computingが作ったものです。材料の名前だけでなく、表面の状態や加工のしかたも見ておく意味が分かる例です。ただし、関連を調べた結果だけで装置全体の性能や量産の成功が保証されるわけではありません。研究で担った役割と受注・売上は別の確認事項であり、株価が上がる理由として読むものではありません。[17]

ヘリウムは鉱石とは別の資源です。USGSは地中にたまったヘリウムや天然ガスからの回収を説明しています。ただし、その一般的な資源説明をヘリウム3の製造・供給経路とそのまま同じにすることはできません。今回はヘリウム3の調達先・調達量・将来価格までは確認していません。[15]

7.消費電力は、チップだけを見ても分からない

見取り図 07

電力を比べる前に、数字の範囲をそろえる

施設・装置全体・チップという測定範囲の違いを表す概念図。
図の読み方

左から:施設まで含める範囲/量子装置全体の範囲/量子チップの範囲。

どこまで含めた数字かを確かめます。絵の大きさは電力の比率を表しません。

施設まで含める範囲空調・通常の計算機なども確認
量子装置全体の範囲冷却・制御などを含むか確認
量子チップの範囲チップの数字だけで全体を判断しない

比較の条件:対象装置・測定範囲・運転時間・解いた問題・答えの品質

比較範囲を整理した概念図です。面積は電力の比率を表しません。消費電力と冷却能力は別の数字です。
図の根拠:第7章の本文にある比較上の注意。実測値や方式間の優劣は示していません。

電力を見るなら、どこからどこまでを含めた数字かを先に確かめたいところです。量子チップだけなのか、冷却と制御を含む装置全体なのか、施設の空調や通常の計算機も含めるのかで、比較対象が変わります。

冷凍機が使う電力と、最も冷たい部分で時間当たりに取り除ける熱(冷却能力)も別の数字です。どちらにもワットという単位が使われることがありますが、冷却能力をそのまま電気代へ読み替えることはできません。

比較には、少なくとも対象装置・測定範囲・運転時間・解いた問題・答えの品質が必要です。使用電力量は、一定の電力で運転した場合なら電力に時間を掛けたものです。今回集めた資料だけでは方式横断の同条件比較を作れないため、「量子だから必ず省エネ」「冷凍機があるから必ず不利」とは結論しません。

製造時のエネルギー、運転時の電力、保守で使う資材も別々です。今後は、測定範囲が明記された施設・製品の公式資料が出たときに、数字を追記していきます。

8.装置・部品・材料を担う上場企業を、役割別に見る

見取り図 08

企業名は、役割と確認した段階をセットで読む

本体・部品や加工・冷却や資源供給という役割を並べるイラスト。企業間の取引関係は示しません。
図の読み方

左から:本体・方式/部品・装置・加工/冷却・資源供給。

役割の分類です。企業間の供給関係を示す図ではありません。

本体・方式量子プロセッサや計算システムの製造・研究開発
部品・装置・加工制御・光・低温機器・検査・光回路加工など
冷却・資源供給極低温技術・高純度ガス・ヘリウム供給など

研究発表・製品説明・実納入は別の段階。株価は各社の参照リンクで日時と市場を確認します。

第8章の18社を読むための役割分類図です。企業間の取引・供給関係、特定の一台への採用、売上の大きさを示す図ではありません。
図の根拠:第8章の本文と各社の「確認した段階」「根拠」欄。

ここでは、量子コンピュータに関わる18社を例として紹介します。本体・方式、部品・装置・加工、冷却・資源供給の三つに分けています。製造・研究開発・一般供給の違いは、各行の「確認した段階」欄で区別しています。製品の説明があることと、特定の機械への採用・納入が確認できることも別です。

会社と主な上場先の確認日:2026年10月20日。取引所とコードは法人を見分けるための情報です。企業や株式の順位付け、購入・売却の推奨ではありません。上場先をすべて列挙した表ではなく、株式の種類が複数あっても会社数は重ねて数えません。

株価情報は各社の株価参照リンクから確認できます。USDは米ドル、JPYは日本円、EURはユーロです。Alphabetは株式の種類が異なるGOOGLとGOOGを別リンクで示します。リンク確認日:2026年10月20日。価格の基準日時・市場・通常取引か時間外か・表示の遅延は参照先で確認してください。この記事の確認日を株価日時とは扱いません。記事内で価格は自動更新されません。

本体・方式

会社・主な上場先何を担う?確認した段階・読む際の注意根拠
IBM
NYSE:IBM
超伝導の量子プロセッサ・システムシステム・技術資料
超伝導方式の装置例として参照。全方式がIBMと同じ構造ではない。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):IBM
Alphabet(Googleの親会社)
Nasdaq:GOOGL / GOOG
Google Quantum AIのWillowなど、超伝導量子チップグループの研究開発
技術を発表するGoogleと、上場する親会社Alphabetを区別する。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):GOOGL / GOOG
Rigetti Computing
Nasdaq:RGTI
超伝導量子プロセッサと量子計算システムシステム・製品説明
量子チップとシステムを扱う。ロードマップの将来値を現行納入仕様と混同しない。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):RGTI
IonQ
NYSE:IONQ
イオントラップ方式の量子計算機システム・技術資料
原子をイオンとして扱う方式の例。個別部品の供給会社まで推測しない。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):IONQ
D-Wave Quantum
Nasdaq:QBTS
超伝導アニーリング計算機。ゲート型も開発対象販売システムと開発を区分
Advantage2はアニーリングのシステム例。別方式の開発計画を同じ完成品と扱わない。
製品・上場情報(同一資料)
株価参照(USD):QBTS
Quantinuum
Nasdaq:QNT
QCCD方式のイオントラップ量子計算システム商用システムの公式説明
H1の材料例と現在の製品は分けて読む。上場主体はQuantinuum自身として確認。
製品・上場情報(同一資料)
株価参照(USD):QNT
富士通
東京証券取引所:6702
理研と共同開発する超伝導量子コンピュータ共同開発・研究基盤
共同開発の相手と富士通を分ける。量子以外の計算機事業と区別する。
製品・技術
上場情報
株価参照(JPY):6702.T
Microsoft
Nasdaq:MSFT
インジウムヒ素とアルミニウムの構造を使うMajorana 1に関する企業発表研究開発・企業説明
材料・構造の説明として紹介。大規模で誤りに強い計算の完成を独立に確認したとはしない。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):MSFT
Intel
Nasdaq:INTC
半導体スピン量子ビット・制御技術の公開研究例2020年の研究発表を参照
同位体材料と半導体加工を学ぶ背景例。現在の販売機や最新納入実績の確認ではない。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):INTC

部品・装置・加工

会社・主な上場先何を担う?確認した段階・読む際の注意根拠
三菱電機
東京証券取引所:6503
多量子ビット制御レーザーと低雑音増幅器モジュール2026年9月の研究開発開始
完成品の量産・出荷ではなく研究開始。量子コンピュータを支える部品の記事でも個別発表を紹介。
製品・技術
上場情報
株価参照(JPY):6503.T
住友重機械工業
東京証券取引所:6302
極低温冷凍機などの低温技術技術・機器分野の公式説明
冷却を支える機器側の例。特定量子計算機への納入先・採用型式は本稿では未確認。
製品・技術
上場情報
株価参照(JPY):6302.T
Coherent
NYSE:COHR
量子技術向けレーザー・光学関連製品製品・応用資料
計算・センシング・通信の用途を分ける。光学製品の全売上を量子向けにしない。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):COHR公式IR(掲載状況は参照先で確認)
Keysight Technologies
NYSE:KEYS
量子ビットの制御・読み出しを担うQuantum Control System製品資料
計測・制御システム側の会社。量子プロセッサ本体のメーカーと同一視しない。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):KEYS
FormFactor
Nasdaq:FORM
量子デバイスの低温プロービング・検査機器製品・応用資料
主に作ったチップを低温で試す装置。量子ビットそのものの製造とは分ける。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):FORM
浜松ホトニクス
東京証券取引所:6965
単一光子検出など量子応用を支える光検出技術製品・応用資料
計算・量子通信などの用途資料を区分する。特定機種への採用は別途確認が必要。
製品・技術
上場情報
株価参照(JPY):6965.T
Quantum Computing Inc.(QCi)
Nasdaq:QUBT
薄膜ニオブ酸リチウムの光回路・ファウンドリー製造・加工サービス説明
量子用だけでなく通常の光通信も対象。光部品製造を量子計算の性能実証に置き換えない。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):QUBT

冷却・資源供給

会社・主な上場先何を担う?確認した段階・読む際の注意根拠
Air Liquide
Euronext Paris:AI
極低温技術・高純度ガス、量子製造への支援グループの技術と協業
Quoblyへの投資・製造支援も公表。投資先と上場会社自身を分け、完成機の製造と混同しない。
製品・技術
上場情報
株価参照(EUR):AI
Linde
Nasdaq:LIN
ヘリウムの精製・液化・供給一般資源供給を確認
ヘリウム供給会社の例。特定量子計算機への供給、ヘリウム3の取扱い・量は本資料で未確認。
製品・技術
上場情報
株価参照(USD):LIN

企業名を、装置の見取り図へ戻して読む

例えば「冷やす」なら住友重機械工業などの低温技術、「操る・読み取る」ならCoherent、Keysight、浜松ホトニクス、「作ったチップを試す」ならFormFactorという見方ができます。これらを並べても、同じ会社の製品が一台へ全部入っているとは限りません。

材料側ではQCiの薄膜ニオブ酸リチウム加工が例になります。希少資源の鉱山を持つ企業と、量子装置に使える純度・形状・性能の部品を作る企業は、役割が違います。今回は一次資料で特定装置への供給関係を確かめられない鉱山会社を、量子向けの確定供給先として加えていません。

古い企業一覧をそのまま使わない

Quantinuumは2026年6月の上場完了を公式に発表しています。過去の未上場時代の説明だけをもとに、Honeywellの株式だけで紹介するのは避けます。上場後のHoneywellとの資本関係は、本稿では確認していません。またD-Waveの四半期報告書によると、QBTSの取引は2026年7月27日にNYSEからNasdaqへ移りました。会社名とコードが同じでも、取引所が変わる場合があります。

冷却設備でも事業の移動があります。Quantum Designは2026年1月、Oxford InstrumentsのNanoScience部門の買収完了を発表しました。古い資料にある希釈冷凍機を、現在も元の上場会社が保有する事業として扱わないための確認例です。買収完了の公式発表(PDF)

BlueforsやQuEraなど、本編に出てくる企業をすべて上場企業表へ入れるわけでもありません。上場の有無・対象法人・親子関係を確認し、未確認のものは無理に証券コードを付けません。出資している会社と、実際に機械や部品を製造する会社も別々に扱います。

企業紹介も、続編と一緒に更新する

新しい部品の発売・実納入・製造体制の変更に加え、上場・市場変更・事業売却・社名変更も確認対象にします。一覧の確認日だけを新しくするのではなく、役割や対象法人のどこが変わったかを記します。各社が大きな一般事業を持つ場合、その売上を量子関連の売上と読み替えません。

Air Liquideの協業範囲は2026年6月のQuoblyへの投資・製造支援発表も参照。支援先の製品化目標を達成済みの量産・販売と扱わず、一般のヘリウム供給情報をヘリウム3の調達先確認に置き換えません。

この章とは別に、企業を一社ずつ詳しく読む記事が2本あります。材料・光部品・加工などは「A23-1 量子コンピュータの材料・部品を扱う上場企業14社」、冷却・ヘリウム・配線・電源は「A24-1 冷凍機・ヘリウム・配線・電源を扱う上場企業9社」です。どちらも、この章の表とは顔ぶれが一部違います。

9.新しい機械の発表は、どこが変わったかで読む

見取り図 09

新しい発表を、六つの問いで確かめる

新しい発表の方式・役割・材料・段階・条件・未確認点を調べるイラスト。
図の読み方

右側の6枚は、上段の左から:方式/役割/材料。下段の左から:段階/条件/未確認。

何が新しく、どこまで確認でき、何が分からないかを読みます。

  1. 方式何に量子情報を持たせる?
  2. 役割装置のどこが変わった?
  3. 材料元素・薄膜・加工法の何が新しい?
  4. 段階設計・実験・販売・実運用のどこ?
  5. 条件温度・真空・電力・保守は?
  6. 未確認資料に書かれていないことは?
発表を読むための確認手順です。発表内容の実現や企業の受注をこの図自体が保証するものではありません。
図の根拠:第9章の確認項目。

新製品や研究成果を見つけたら、量子ビット数だけでなく、次の順で確認します。

  1. 方式:量子情報を何に持たせるのか。対象機種と改訂版はどれか。
  2. 役割:計算・制御・冷却・読み出し・接続のどこが変わったか。
  3. 材料:元素、化合物、同位体、薄膜、加工法のどれが新しいか。
  4. 段階:論文の設計、実験、試作、販売、納入、実運用のどこまで確認できるか。
  5. 条件:温度・真空・電力・保守の条件は何か。装置全体の数字か。
  6. 未確認:数量・供給関係・価格・量産性など、資料にないことは何か。

部品の性能が改善しても、装置全体の課題がすべて解けたとは限りません。原料の用途が見つかっても、特定企業の受注や利益は別の確認事項です。関連する発表の読み方は、レーザー・増幅器・光のチップを扱った記事でも紹介しています。

10.この特集は、Vol.1からどう続ける?

見取り図 10

Vol.1を入口に、確認できたテーマを掘り下げる

入口となる記事と、公開済みのVol.2(冷却)、原子・材料を扱う続編の候補を表すイラスト。
図の読み方

下の本はVol.1の入口。左の絵は公開済みのVol.2(冷却)、中央と右の絵は、原子・材料を扱う続編の候補です。

公開済みのVol.3(製造・加工)は、この図を作った後に決めた題材のため、絵には入っていません。候補の順番や公開日は決まっていません。

このページVol.1を改訂誤りの訂正・同じテーマの補足。確認日と変更内容を記す。
Vol.2 公開済み冷凍機・ヘリウム・配線装置全体の電力も含めて調べました。
Vol.3 公開済み製造・加工設計の道具・工場・試作と試験を調べました。
次の候補レーザー・真空・原子の冷却/薄膜・同位体・人工結晶番号は、題材が決まったときに付けます。
Vol.2・Vol.3は公開済みです。それ以外は題材の候補で、順番や公開日は決まっていません。
図の根拠:第10章の継続方針と候補一覧。

Vol.1は、方式と装置・材料の関係を確かめる入口として残します。誤りの訂正や同じ話の補足はこのページを改訂し、確認日と変更内容を示します。新しい機械や材料によって一つのテーマを掘り下げられるときは、Vol.2以降の続編にします。

Vol.3は、予告していた順番を入れ替え、製造・加工を先に扱いました。Vol.4以降の番号は、題材が決まったときに付けます。候補は公開日を約束するものではありません。一次資料に基づく新しい理解が得られるかを確かめ、同じ話を増やすためだけの続編にはしません。新機械の発表は、その方式に関する続編のきっかけとして扱います。

今日覚えるのはこれだけ

量子コンピュータは、小さな計算部分と、それを支える冷却・光・配線・電子回路などの組合せです。材料と資源の必要性は方式ごとに違い、希少な物質を使うことと、装置全体が作れて使えることは別の話です。

今回の私の整理では、「何でできているか」を知るには、材料名だけでなく、どの部品で何をさせるのかまで見るのが近道だと感じました。これからは新しい量子コンピュータのニュースを、この見取り図へ書き足していく予定です。

出典と確認範囲

上場企業表の製品・上場情報の根拠と株価参照先は、表内のリンクに示しています。以下は2026年10月20日に確認した仕組み・材料の資料です。古い資料は仕組みや使用例の背景であり、2026年の最新納入・現行全機種の仕様を示すものではありません。論文は要旨の範囲で確認し、全文の実験条件まで検証したとはしていません。

  1. IBM:What is quantum computing?(2026年4月2日更新)。構成要素と超伝導回路・制御の説明。
  2. Bluefors:Dilution Refrigerator Measurement Systems。ヘリウム混合物と閉じた循環系。掲載日未確認の製品資料。
  3. Zikiyほか:Tantalum as a base material for superconducting integrated circuits(2026年6月11日投稿)。タンタルとアルミニウム・ニオブ系回路に関する総説プレプリントの要旨。
  4. Quantinuum:Quantum Milestone: Turning a Corner with Trapped Ions(2022年7月11日)。当時のH1技術のイッテルビウムとバリウムの役割。
  5. QuEra:Using Neutral-Atom Arrays to Build Quantum Computers。ルビジウム・光ピンセット・原子のレーザー冷却。掲載日未確認の技術解説。
  6. Intel:High-Fidelity ‘Hot’ Qubits(2020年4月15日)。同位体純度を調整したウエハーと低温のスピン量子ビットの研究例。
  7. Yangほか:Silicon quantum processor unit cell operation above one Kelvin(2019年6月19日改訂の要旨、関連誌論文2020年)。シリコン28を増やした材料と量子ドットの研究例。
  8. QCi:Thin film lithium niobate foundry。薄膜ニオブ酸リチウムと光回路の用途。掲載日未確認の製品・サービス説明。
  9. A. Sayem:Photonic quantum computing on thin-film lithium niobate: Part I(光源と超伝導検出器の一体化設計)(2023年投稿)。光源と超伝導検出器を組み合わせる設計研究の要旨。
  10. Element Six / AWS:Perfect imperfections(2023年4月5日)。人工ダイヤモンドの欠陥を用いる量子通信メモリーの研究。計算機の完成を示す資料ではない。
  11. Microsoft:Majorana 1発表(2025年2月19日)。インジウムヒ素とアルミニウムの構造に関する企業説明。企業の達成主張全体を独立に検証したものではない。
  12. Bluefors:Cryogenic Wiring for Qubit Control。ニオブ・チタン系と銅・ニッケル系の配線の測定例。掲載日未確認。
  13. Bluefors:Coaxial Wiring。金めっきした銅の部材を含む配線設備例。掲載日未確認の製品資料。
  14. 英国王立化学会:Ytterbium。イッテルビウムの元素分類。
  15. USGS:Helium and Rare Gases Statistics and Information。ヘリウム資源の一般説明。ヘリウム3の調達仕様の根拠とはしない。
  16. 理研:シリコン量子ビットの同時高精度操作を実現(2026年10月15日)。Nature Physics、DOI 10.1038/s41567-026-03466-2。論文本文は未確認(理研の発表文の範囲で確認)。
  17. Fermilab:SQMSの材料評価研究(2026年10月1日)。紹介された論文はApplied Physics Reviews 13巻2号 021416。論文本文は未確認、Fermilabの記事の範囲で確認。

2026年10月25日改訂(確認日:同日):第2章の表に理研のシリコン量子ビット同時操作の研究例を、第6章にFermilabが紹介した材料・加工とエネルギー緩和時間の関連を追加しました。従来の材料・加工の説明を具体例で補い、出典2件を加えたもので、方式の説明や図は変えていません。

2026年10月27日改訂(確認日:同日):第8章の終わりに、企業を一社ずつ紹介する2記事(A23-1・A24-1)への案内を加えました。本文の説明・表・図は変えていません。

2026年10月29日改訂(確認日:同日):第10章で、公開済みのVol.2・Vol.3へのリンクを加えました。Vol.3は予告の順番を入れ替えて製造・加工を扱ったため、残りの題材は番号を外して「次の候補」としました。図の絵は変えていません。

公開日:2026年10月21日/最終確認日:2026年10月29日

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