冷凍機・ヘリウム・配線・電源を扱う上場企業9社|量子用途はどこまで確認できる?
量子コンピュータを冷やすには、冷凍機だけを見ればよいのでしょうか。周りには冷媒を扱う会社、信号を運ぶ部品の会社、電力を支える会社もあります。この続編では、冷却設備の内側と外側を分け、製品資料で何が分かり、何がまだ分からないかを9社で見ていきます。
元記事:A24「冷凍機・ヘリウム・配線と電力」。元記事の企業紹介は全体を見渡す入口で、本稿は各社の扱うもの・段階・確認範囲を詳しく読む続編です。
材料・光部品・加工などを扱う会社は、姉妹編「A23-1 量子コンピュータの材料・部品を扱う上場企業14社」で詳しく紹介します。
確認日:2026-10-27。公開資料を読んだ学習用の解説です。実機試験、工場見学、採用品の検証は行っていません。特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。企業の網羅一覧ではなく、掲載順も投資の順位ではありません。
じいじのやわらか解説
冷やす機械にも、電気を送る線にも、それぞれ専門の会社があります。ただ、部品を売っていることと、量子コンピュータで使われていることは同じではありません。「何を売る会社か」と「どこまで使われたと分かるか」を分けると、難しい会社案内も少し読みやすくなります。
この一覧の読み方
根拠は次の3区分で示します。会社の優劣や技術の順位ではありません。
- 量子用途を公式資料で直接確認:企業が量子用途を明記しています。研究の対象・製品の用途・開発支援も含み、特定機への納入を保証しません。
- 一般の製品・能力のみ確認(量子への供給は未確認):この区分には一般の部品・装置・ガス供給も含めます。製品の役割は確認できても、量子向けの採用・供給までは確認できません。
- 量子用途は未確認:今回の資料で対象用途そのものを裏づけられない場合です。根拠が足りない会社は詳細一覧へ無理に加えません。
段階は会社全体ではなく、ここで紹介する製品・研究について記します。「開発支援」は開発側の活動で、完成品の販売とは別です。「販売」は公式の製品・サービス案内で確認した範囲であり、受注件数や納入先を確認した意味ではありません。どの会社も、量子に関わる部分の売上額や全社に占める割合は確認しておらず、推定しません。「未確認」は非開示だと断定する意味でもありません。
株価の数値は転載せず、参照先へのリンクだけを付けています。USDは米ドル、JPYは日本円、EURはユーロです。各ページでは銘柄、市場、通貨、価格の基準日時、通常取引か時間外かを確認してください。リンク確認日は株価の日時ではありません。
冷たい環境をつくる
1.住友重機械工業株式会社 — 冷凍機・水冷圧縮機F-70と、電力・冷却水の仕様
主な上場先・コード:東京証券取引所:6302。
A24第6章にも登場する会社ですが、ここでは冷凍機と圧縮機の役割を分けます。F-70の仕様には電源、消費電力、冷却水の条件があり、組み合わせる冷却部などで条件が変わる旨も示されています。圧縮機の電力を量子装置全体の電力と読み替えることはできません。今回の確認範囲では、特定の量子計算機への納入先・採用型式は未確認です。
事業の中での位置づけ:上場企業は住友重機械工業株式会社です。グループの冷却機器事業を紹介しており、機械事業全体を量子関連事業とみなしません。
段階:販売(冷却機器)。
根拠の強さ:一般の製品・能力のみ確認(量子への供給は未確認)。
出典:製品・技術資料1 / 製品・技術資料2 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:6302の株価ページ(JPY)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
2.FormFactor, Inc. — 低温試験環境と卓上型希釈冷凍機Flatiron
主な上場先・コード:Nasdaq:FORM。
FormFactorは低温で量子デバイスを試す用途を公式に挙げ、Flatironを極低温研究向けの卓上型希釈冷凍機として紹介しています。A24の「冷やす」を、試験環境づくりから見る例です。製品があることと、ある量子計算機で運転されていることは別です。今回、特定機への納入実績や冷却能力を独自に測定した事実はありません。
事業の中での位置づけ:一般半導体の検査も扱う会社です。量子向け低温試験はその中の用途であり、半導体検査全体の売上を量子関連の売上に置き換えません。
段階:販売(製品資料)。
根拠の強さ:量子用途を公式資料で直接確認。
出典:製品・技術資料1 / 製品・技術資料2 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:FORMの株価ページ(USD)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
冷媒を供給する
3.L’Air Liquide S.A. — グループ会社Airgasによる希釈冷凍機用ガスの供給
主な上場先・コード:Euronext Paris:AI。
Air LiquideグループのAirgasは、ヘリウム3(ヘリウムのうちごく少ない種類で、希釈冷凍機で使う)の供給を公式サイトで案内し、用途に量子コンピューティングと希釈冷凍機を明記しています。一般のヘリウム販売にとどまらず、A24で説明した冷却に必要な同位体を扱う例です。製品仕様と注文相談の案内から販売段階を確認できます。ただし、特定の量子装置への納入実績、現在の在庫・納期、日本への供給条件までは確認していません。サイトにある装置写真も、その装置へのガス納入を証明するものとしては扱いません。
事業の中での位置づけ:上場会社はAir Liquideで、ここで供給を案内する事業者はグループ会社Airgasです。A23-1のQuoblyへの製造支援とは別の事業を取り上げています。
段階:販売(Airgasのヘリウム3供給・注文相談案内を確認)。
根拠の強さ:量子用途を公式資料で直接確認。
出典:製品・技術資料1 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:AIの株価ページ(EUR)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
4.Linde plc — ヘリウムの精製・液化と物流
主な上場先・コード:Nasdaq:LIN。
A24の冷媒を調べる際は、ヘリウムという名前の次に、同位体・純度・供給形態を確かめる必要があります。Lindeの公式説明で確認できるのは一般の精製・液化・容器供給です。ヘリウム3の取扱量や、特定の希釈冷凍機への供給はこの資料では未確認です。閉じた循環系で使う量と、会社が販売するガスの量を結びつけて需要を推計していません。
事業の中での位置づけ:産業ガス事業の一部としてヘリウムを扱います。全社売上やヘリウム事業の規模を、そのまま量子用途の売上とはしません。
段階:販売(一般のガス供給)。
根拠の強さ:一般の製品・能力のみ確認(量子への供給は未確認)。
出典:製品・技術資料1 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:LINの株価ページ(USD)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
信号を運び、読み取る
5.Amphenol Corporation — 低温同軸配線・真空を保つ接続部品・低温減衰器
主な上場先・コード:NYSE:APH。
A24の室温側から低温側へ信号を届ける経路に関わります。TR Multicoaxの公式資料では、ケーブルに加えて、真空の境界を越える接続部品や低温の減衰器を紹介しています。減衰器は信号の大きさを下げる部品です。用途を直接確認できますが、どの量子計算機メーカーが採用しているかは今回確認していません。材質の候補が載ることと、全製品が同じ材質であることは別です。
事業の中での位置づけ:上場主体はAmphenol Corporationです。グループの接続部品事業の一用途を扱い、通信・産業などを含む全社売上を量子配線の売上としません。
段階:販売(量子向け製品資料)。
根拠の強さ:量子用途を公式資料で直接確認。
出典:製品・技術資料1 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:APHの株価ページ(USD)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
6.Keysight Technologies, Inc. — 配線の室温側で信号を作り、読み出しを制御する装置
主な上場先・コード:NYSE:KEYS。
A24の配線は、それだけで量子ビットを操作するものではありません。KeysightのQCSは信号を作ったり測ったりする装置とソフトウェアを組み合わせ、量子ビットなどの実験対象に対応させます。同軸ケーブルや低温フィルタそのものの供給実績とは区別します。製品資料を確認した段階で、記事に登場する他社の部品と一緒に納入されたとは判断していません。
事業の中での位置づけ:幅広い電子機器の設計・試験を支える会社の製品群の一つです。計測事業全体の売上を、量子制御製品の売上と扱いません。
段階:販売(QCS製品資料)。
根拠の強さ:量子用途を公式資料で直接確認。
出典:製品・技術資料1 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:KEYSの株価ページ(USD)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
7.三菱電機株式会社 — 低温の読み出し回路を支える低雑音増幅器
主な上場先・コード:東京証券取引所:6503。
A24の配線を通って戻る弱い信号を、どう読み取るかに関わります。対象は極低温で動く小型の低雑音増幅器モジュールの開発です。冷凍機でも同軸ケーブルでもなく、信号を大きくする側の部品です。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業に採択され、研究開発を始めると発表しました。量産品の販売や特定機への納入、装置全体の省電力を証明する資料ではありません。
事業の中での位置づけ:既存の制御・マイクロ波ICの技術を量子分野へ応用する研究です。既存製品の販売額を、この新研究の売上とはしません。
段階:研究・開発(開始発表)。
根拠の強さ:量子用途を公式資料で直接確認。
出典:製品・技術資料1 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:6503の株価ページ(JPY)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
室温側の電源を支える一般製品
8.TDK株式会社 — 室温側の電源ラインに使う一般EMCフィルタ
主な上場先・コード:東京証券取引所:6762。
A24のフィルタという言葉には注意が必要です。今回のTDKの資料は電子機器の電源ライン用であり、希釈冷凍機の最も冷たい部分へ入れる量子制御用フィルタの採用実績ではありません。同じ「雑音を抑える」でも、設置場所や温度、通す信号が異なります。量子用途への供給と極低温での適合性は未確認として紹介します。
事業の中での位置づけ:電子部品・電源関連の製品の一つを扱います。一般部品の売上を量子関連売上に割り振る根拠は、今回確認していません。
段階:販売(一般用途)。
根拠の強さ:一般の製品・能力のみ確認(量子への供給は未確認)。
出典:製品・技術資料1 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:6762の株価ページ(JPY)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
9.Schneider Electric SE — 建物・周辺機器側の一般UPS
主な上場先・コード:Euronext Paris:SU。(公式IRでは「SU.PA」と表示。「.PA」はパリ市場の意味です)
A24で扱う電力は、冷却機器や制御装置を動かすためのものです。Schneider ElectricのUPSは電源設備を調べる入口ですが、停電対策の製品があるだけで、量子状態を守れることや計算結果の正確さが保証されるわけではありません。必要な容量や接続は設備ごとの確認事項です。本稿は設計・機種選定の案内ではなく、一般製品の役割の紹介にとどめます。
事業の中での位置づけ:電力管理・関連設備の事業の中の一般製品です。電源設備の販売と、量子計算機向け売上・省電力効果を切り分けます。
段階:販売(一般の電源設備)。
根拠の強さ:一般の製品・能力のみ確認(量子への供給は未確認)。
出典:製品・技術資料1 / 上場情報(公式)。資料確認日:2026-10-27。
株価参照:SUの株価ページ(EUR)。株価の日時・遅延は参照先で確認。リンク確認日:2026-10-27。
同じ言葉でも、使う場所を確かめます
この一覧には、量子向けと明記された配線も、一般の電源フィルタやUPSもあります。一般製品を並べたことは、量子装置の推奨構成を示すものではありません。電源ラインのフィルタを低温の信号用フィルタと取り違えず、圧縮機の仕様を装置全体の消費電力に置き換えないようにします。
ヘリウムも、一般の供給案内だけでは、必要な同位体・純度・数量・補充条件は分かりません。研究設備に合うかどうかは個別の仕様・契約で確かめることです。
発表を読むときの三つの確認
一つ目は、資料が示すのは製品か、研究か、実際の納入か。二つ目は、量子用途が明記されているか、それとも一般用途の説明か。三つ目は、機器単体の話か、装置全体の話か。A24の冷却・配線・電力の区別と結びつけると、会社の発表を読み違えにくくなります。
出典の確認範囲:企業の公式技術・製品・IR資料、取引所資料を優先しました。論文は本文中で示した要旨の範囲です。株価リンク先の会社名または株価案内は確認していますが、動的な株価チャートの実表示・最新価格を保証するものではありません。
公開日:2026年10月27日/最終確認日:2026年10月27日
