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題名『冷凍機・ヘリウム・配線と電力』と、考えるじいじ、配線の通った多段の冷凍機のイラスト。特定の製品ではありません。
AIで作成した概念図です。実際の装置の形や大きさ、配線の本数を示すものではありません。

冷凍機・ヘリウム・配線と電力 
装置と材料特集 Vol.2

小さなチップを動かすのに、なぜ大きな冷却設備が必要なのでしょう。今回は、超伝導方式などで使われる希釈冷凍機を入口に、「入ってくる熱を減らし、残る熱を外へ運ぶ」という見方で装置を読みます。

1.大きい容器は、チップだけを入れる箱ではない

IBMは、従来の超伝導量子コンピュータの冷却容器を、真空で断熱した容器の中に希釈冷凍機を置く構成として説明しています。小さいチップの周りにも、低温を保ち、配線を収める空間が必要です。外形の大きさだけを計算能力の大きさと結びつけないようにします。 [1]

断熱容器・冷たい段・配線・チップの位置関係を表す概念図。実機の縮尺や配線の本数は示していません。
AIで作成した概念図です。実際の装置の形や大きさ、配線の本数を示すものではありません。

2.ヘリウムは、冷やすために巡らせて使う

希釈冷凍ではヘリウム3とヘリウム4の混合物を使います。とても低い温度では、混ぜたヘリウムが、ヘリウム3の多い層と少ない層に分かれます。ヘリウム3が多い層から少ない層へ移るとき、まわりから熱を奪います。資料はこれを「蒸発」にたとえています。連続運転の仕組みでは、ポンプで取り出したヘリウム3を戻して循環させます。 [2]

「cryogen-free(液体ヘリウムなどの冷媒を外から継ぎ足さずに冷やす方式)」と書かれていても、装置の中でヘリウムをまったく使わないとは読めません。Uhligの2014年の実験報告の要旨は、cryogen-freeの装置にヘリウム3とヘリウム4の希釈回路を使うことを明記しています。循環する冷媒と、外から補給する液体冷媒を区別して仕様を読むことが大切です。 [4]

USGSの資源案内では、天然のヘリウムのほとんどはヘリウム4と説明されています。一般のヘリウム資源や市場の話を、そのまま希釈冷凍用のヘリウム3の調達量に読み替えることはできません。本稿では同位体ごとの調達量・価格や、装置ごとの補充量は確認していません。 [5]

冷媒が巡る経路と外部の電源を別の色で描いた概念図。補給ゼロや損失ゼロを示していません。
AIで作成した概念図です。実際の装置の形や大きさ、配線の本数を示すものではありません。

3.信号を届ける線は、熱の入口にもなる

Krinnerらの2018年の研究では、超伝導回路向けの配線について、線そのものを伝わって入ってくる熱(受動的な熱負荷)と、信号が線の途中で弱められるときに熱に変わる分(能動的な熱負荷)を測定しています。線は信号の通り道である一方、冷却側が処理する熱にも関わるわけです。配線を増やす議論では、本数だけでなく熱の受け持ち方も確認します。 [3]

冷凍機の中は、下へ行くほど温度が低い何段もの板に分かれています。 [1]

同研究は、信号を弱める部品(減衰器)やケーブルなどを冷たい段へつないで熱を逃がす(熱固定)構成を扱っています。冷却能力の限られた最も冷たい場所へ、余分な熱をそのまま持ち込まないための工夫です。この論文は設計の考え方を学ぶ背景資料として使い、当時の構成を現在の全製品に当てはめません。 [3]

信号の矢印と熱の矢印を別の色で描き、途中の冷たい段で熱を受け止める位置を示した概念図。配線の本数は示していません。
AIで作成した概念図です。実際の装置の形や大きさ、配線の本数を示すものではありません。

4.使う電気は、冷たいチップの外にもある

液体ヘリウムを外から継ぎ足さない方式の希釈冷凍機では、パルス管冷凍機という別の冷凍機を組み合わせた研究例があります。 [4] F-70は、パルス管冷凍機などと組み合わせて使う圧縮機です。 [6] 量子計算機ごとにどの冷凍機・圧縮機を使っているかは、本稿では確認していません。

住友重機械工業の冷凍機事業(SHI)の水冷圧縮機F-70の公式仕様には、消費電力と冷却水の条件が別々に載っています。また消費電力には「典型値」という注記があります。冷却装置の数字を読む際は、圧縮機などの電力、運転条件、周辺の冷却設備を含むかまで確認する必要があります。製品単体の仕様を量子計算機全体の実測消費電力として扱いません。 [6]

比較のためには、①どの装置を数えたか、②冷やしている途中か低温を保つ運転中か、③どれだけの時間を測ったか、④同じ計算を、同じ正確さで解いたか、をそろえて記録したいところです。これは本稿の確認用の整理であり、特定の方式が省電力だという実測結果ではありません。

F-70の公式ページでも、説明文と仕様表とで消費電力の幅の書き方が違ったため、本稿では数値を載せていません。 [6]

5.大きくする方法は、一つの容器を広げるだけではない

IBMは2026年8月19日の技術記事で、箱型の冷却セルを接続する構成を紹介し、2つのセルをつないだ実証を行ったと説明しています。配線の収容や、隣り合うセル同士の接続を考えた構造です。これは企業による技術実証の説明であり、将来計画の計算機が完成したという意味ではありません。 [1]

Vol.1では装置を役割で分けました。ここでは、その役割同士をつなぐと「場所・熱・信号」の条件が一緒に動くことを見ました。新製品のニュースでも、温度の低さだけでなく、何を接続でき、どの条件で確かめたかを読むと理解しやすくなります。

6.上場企業は「何を担うか」と段階を一緒に見る

IBMはニューヨーク証券取引所などで、銘柄記号IBMとして上場しています。本稿で確認した役割は冷却構造を量子システムに組み込む技術開発、段階は同社説明による接続実証です。株価の数値や将来の受注・利益は扱いません。 [7] [1]

住友重機械工業は東京証券取引所の上場企業で、証券コードは6302です。同社のSHI Advanced Technologiesの公式資料では冷凍機・圧縮機を扱い、F-70の製品仕様が公開されています。ここで確認したのは冷却を支える機器の製品段階であり、特定の量子計算機への納入や採用型式は未確認です。 [8] [9] [6]

企業名を挙げる目的は装置内の役割を理解することです。製品の存在、研究での使用、量子用途の受注、会社全体の利益は別々に確かめます。売買の推奨ではありません。

冷却・ヘリウム・配線・電源に関わる上場企業は、「A24-1 冷凍機・ヘリウム・配線・電源を扱う上場企業9社」で一社ずつ詳しく読んでいます。

今日覚えるのはこれだけ

冷凍機は「低い温度を出す箱」だけでなく、配線などから入る熱を扱い続ける設備です。冷媒の循環、配線の熱負荷、周辺機器が使う電気を別々に見てから、一つの装置としてつなげて考えてみてください。

出典と確認範囲

確認日:2026年10月21日。メーカー公式資料・公的機関資料・一次論文の要旨を参照しました。実機の運転や消費電力の測定はしていません。古い論文と基礎資料は原理を学ぶ背景で、最新製品の仕様ではありません。

  1. IBM:モジュール型の極低温構造(2026-08-19)。冷却容器、拡張の狙い、2セル実証。将来計画と実証を分離。
  2. Oxford Instruments:Practical Cryogenics(2001年刷(初版1996年))。節5.2、印刷ページ35–37。ヘリウム混合物と連続循環の原理のみ。現行製品仕様ではない。
  3. Krinnerほか:低温配線の実験研究(2018年6月20日公開、2019年にEPJ Quantum Technologyに掲載)。要旨のみ。配線の受動熱負荷と信号散逸の能動熱負荷、熱固定の測定。最新システム性能として扱わない。
  4. Uhlig:Dry dilution refrigerator with 4He-1K-loop(2014-12-11)。要旨のみ。cryogen-freeでも同位体混合物を使う研究例。現行販売機の仕様ではない。
  5. USGS:Helium and Rare Gases Statistics and Information(掲載日未確認)。同位体の一般説明のみ。年次統計の数値・ヘリウム3の調達量/価格は未採用。ページ掲載日未確認。
  6. SHI:F-70水冷圧縮機(掲載日未確認)。SpecificationsのPower Consumption・Cooling Water欄と注記。掲載日未確認。見出しと表で数値表現が異なるため数値は本稿に採用しない。
  7. IBM:投資家向けFAQ(掲載日未確認)。上場先と銘柄記号のみ。ページ掲載日未確認。
  8. 住友重機械工業:2025年12月期決算短信(2026-02-10)。先頭ページの企業名・上場取引所・コードのみ。将来の売上予想は使用しない。
  9. SHI Advanced Technologies:About(掲載日未確認)。住友重機械工業の事業との関係と冷凍機・圧縮機の扱い。掲載日未確認。

2026年10月27日改訂(確認日:同日):第6章の終わりに、企業を一社ずつ紹介するA24-1への案内を加えました。本文の説明・図は変えていません。

公開日:2026年10月25日/最終確認日:2026年10月27日

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