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量子コンピュータを支える部品づくり――レーザー、増幅器、小さな光のチップ

公開日:2026年10月7日

最終確認日:2026年10月7日

企業の公式発表をもとに、量子技術の部品づくりを学びます。図はAIで制作した概念イラストで、実機や企業の施設を再現したものではありません。株式の売買を勧める記事ではありません。

じいじが光の装置や回路の概念モデルを見比べる

今回の疑問:本体の前に、どんな部品が必要なの?

量子コンピュータのニュースでは、「量子ビットが何個になったか」という数字に目が向きがちです。でも、その数字だけで装置の使いやすさや作りやすさまで分かるのでしょうか。量子ビットを制御する光や、弱い信号を扱う回路も、装置を支える大切な要素です。

今回取り上げるのは、三菱電機の研究開発、Pasqalが主導する欧州のQ-PLANET、Infleqtionなどによる小さな光共振器の試作品の三つです。同じ「部品づくり」の話でも、対象と段階は違います。とくにInfleqtionの発表は量子センサーの小型化が中心で、量子コンピュータが小さくなったという発表ではありません。

先に結論を置くと、量子技術の発展を読むには、本体の数字に加えて「何を制御する部品か」「計算用か、測定用か」「研究なのか、試作品なのか」を確かめると整理しやすくなります。今回は三つの発表を、そうした目で読んでみます。

確認できた事実① 三菱電機は二種類の部品の研究開発を開始

三菱電機は2026年9月17日、「量子コンピューターの大規模化に向けた研究開発を開始」と発表しました。NEDOの事業で二つの研究テーマの実施予定先に採択され、研究開発を始めたという内容です。完成した装置の発売を知らせる発表ではありません。三菱電機の公式発表

一つ目は「多量子ビット制御レーザーシステム」です。対象は中性原子型とイオントラップ型です。ここでは、レーザーの光を使って原子やイオンの量子状態を制御します。量子ビットを増やすには、制御に使う光の側も、その規模に応じた仕組みが必要になるわけです。

二つ目は、超伝導型に向けた「超小型多連低雑音増幅器モジュール」です。増幅器とは信号を大きくする回路で、低雑音は余計な雑音を抑えることを指します。小さくまとめた複数の増幅器を極低温で使うための研究開発です。光を使う一つ目とは、対象も部品の役割も違います。両テーマはNEDOの採択一覧(別添4)の「大規模量子コンピュータ実現に向けた部素材開発」区分にも記載されています。NEDOの採択結果・実施予定先一覧(別添4・PDF)

公式発表では、量子コンピュータの大規模化の課題として「100万量子ビット級」が挙げられています。ただし、それだけの量子ビットを備えた完成機ができたという意味ではありません。今回確かめられるのは、その規模を目指すための部品の研究開発が始まったことです。完成時期や、この部品から生まれる売上は、この発表だけでは分かりません。

光の制御、信号の増幅、光の安定化を独立した模式図で示す
概念図。異なる部品の役割を整理したもので、企業の実機の構造や性能を示していません。 図を拡大して見る ↗

確認できた事実② Q-PLANETは部品を作る基盤の話

Pasqalの2026年10月6日の発表は、同社が主導するQ-PLANETについて、欧州の量子技術への取り組みを改めて表明したものです。本文では、ブリュッセルでの正式な開始から約3か月と説明されています。10月6日に新しく始まった事業と読み替えたり、原文にない開始月日を補ったりしないようにします。Pasqalの公式発表

Q-PLANETが目指すのは、中性原子技術に使う部品の試験生産ラインです。対象にはレーザー、原子チップ、微細加工された蒸気セルがあります。原子チップは計算やセンシング、蒸気セルは原子時計や磁場センサーなどに関係する部品として挙げられています。用途は量子コンピュータだけに限られません。

「試験生産ライン」とは、作り方や品質を確かめながら製造の条件を整えるためのラインと考えるとつかみやすいでしょう。研究室で部品を一つ作れることと、同じ品質の部品を繰り返し作れることには、別の課題があります。発表では、製造プロセスや設計に必要な基盤を整える方向が示されています。

だからといって、すでに全部品の量産体制が整い、大量出荷が始まったとまでは読めません。今回のニュースは、部品を作るための共通基盤を育てる事業の話です。Pasqal一社の製品売上が決まったという意味にもなりません。

確認できた事実③ 小さな光共振器は、まずセンサーの小型化

Infleqtionは2026年10月6日、Honeywell Aerospaceとカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)との協力による集積型の光共振器の試作品を発表しました。窒化ケイ素という材料を使うチップ上に、レーザーの光を安定させるための部品を作ったという内容です。Infleqtionの公式発表

光共振器は、光を内部に往復させる仕組みを持つ部品です。今回の光共振器の試作品は、レーザーを安定させる役割を担います。「量子ビットそのものを小さくしたチップ」や「一枚で計算する完成した量子コンピュータ」とは区別して読む必要があります。

役割分担も示されています。InfleqtionとUCSBが共同で設計し、Honeywell Aerospaceのフォトニクス製造施設で試作品が作られました。発表がとくに説明しているのは、量子センサーを手持ちサイズに小型化するための可能性です。完成した手持ちセンサーの発売や、量子コンピュータの性能向上を発表したものではありません。

量子コンピュータは計算を行う装置、量子センサーは量子の性質を利用して時間や磁場などを測る装置です。光を制御する技術などには関係があっても、成果を確かめる物差しは同じではありません。今回は、周辺の量子技術で部品の小型化が進む例として、この発表を取り上げます。

計算する量子コンピュータと測る量子センサーの用途の違い
概念図。計算と測定の目的を分けて考えるための図で、特定製品を表していません。 図を拡大して見る ↗

三つの発表は、目的と段階を分けて読む

三菱電機は、複数の方式の量子コンピュータを支えるレーザーや増幅器の研究開発を開始しました。Q-PLANETは、中性原子技術の部品を作る試験生産ライン事業の進捗を伝えています。Infleqtionなどは、量子センサーの小型化につながる光共振器の試作品を示しました。

この三つを並べても、「どの会社が一番進んでいるか」は決められません。部品、用途、事業の単位が違うからです。試作品があることと、完成した製品を安定して供給できることも同じではありません。ニュースに登場する「開始」「試作品」「製造」という言葉を、そのまま同じ到達点として数えないことが大切です。

部品づくりでは、使える性能に加えて、大きさ、接続方法、製造の再現性なども課題になります。ただし今回の三つの発表から、それぞれの課題がすべて解決したとは判断できません。必要な部品の研究が進むことと、装置全体が実用になることを、別々に確かめたいところです。

研究開発、試作品、試験生産を別々のカードで整理する
概念図。三社の進捗順や優劣を表す図ではありません。各発表の対象と段階は本文で確認してください。 図を拡大して見る ↗

まだ分からないこと

今後確かめたいのは、部品を装置に組み込んだときの性能、同じ品質で作れる割合、供給量や価格、出荷時期などです。小さくなった部品が、装置全体の小型化にどれだけ寄与するのかも、ほかの必要部品や動作条件と合わせて見る必要があります。

これらを「発表に書かれていない」と整理することは、取り組みを否定することではありません。いま確認できる範囲と、次の発表で確かめたい範囲を分けるためです。研究開発の目標を、達成済みの結果に置き換えずに読み続けます。

じいじの感想

今回の発表を読むと、量子技術は大きな本体だけでなく、小さな部品の工夫にも支えられていると感じます。レーザー、増幅器、光共振器という言葉は難しそうですが、まず「光で制御する」「信号を増幅する」「光を安定させる」という役割から入ると、少し見通しがよくなります。

量子ビットの数だけを追いかけるより、どんな部品が必要で、何を作れるようにしようとしているのかも知りたい。それが今回の学びです。株価や将来の売上にすぐ結びつけず、次の公式発表で何が確かめられるかを見ていこうと思います。

今日覚えるのはこれだけ

出典・最終確認日

最終確認日:2026年10月7日。本文の事実は以下の一次資料で確認しました。図は説明用の概念イラストです。

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