【体験記】2枚の量子コインは本当にそろう? 本物の量子コンピュータで量子もつれの回路を試した
公開日:2026年10月15日

分類:今日の量子コンピュータお勉強部屋
実行日・作成日:2026年10月14日
最終確認日:2026年10月16日
本物の量子コンピュータで、今度は2枚、そして3枚の「量子のコイン」がそろうかを試しました。硬貨を投げたのではなく、量子ビットをつなぐ回路を実行した記録です。量子もつれの考え方は「量子もつれとは何?」で説明しています。
回路づくりや送信の画面操作はAI(Claude)に手伝ってもらいました。この2回は、送信前の予想を記録していません。使ったのはIBM Quantum Platformの無料プランで、装置はibm_marrakeshです。
2枚の量子コインをつなぐ回路
最初に0に準備される量子ビットを2つ使います。1つ目に「H」という操作を置き、1つ目を制御側、2つ目を標的側として「CNOT」をつなぎます。最後に2つとも測定する回路を、1,000回実行しました。
これは、理想的には「ベル状態」という量子もつれを作る基本的な回路です。理想どおりなら、測定結果は「2つとも0」か「2つとも1」です。「片方だけ1」は出ません。
ここでいう1,000回は、準備から測定までを繰り返す回数です。1回の測定で1,000個の答えを同時に読んだという意味ではありません。
本物の結果:1,000回のうち968回がそろった
| 結果 | IBM画面の表示 | 回数 |
|---|---|---|
| 2つとも0 | 0000 | 522回 |
| 2つとも1 | 0011 | 446回 |
| 1つ目だけ1 | 0001 | 6回 |
| 2つ目だけ1 | 0010 | 26回 |
| 合計 | — | 1,000回 |

画面の表示は4桁ですが、右端から2桁が今回測定した2つの結果です。右端がq[0](1つ目)、その左がq[1](2つ目)です。左側の0を、ほかの量子ビットも測定した証拠とはみなしません。
2つとも0だった522回と、2つとも1だった446回を合わせると、968回、割合は96.8%です。一方、そろわなかった結果は6回と26回を合わせて32回、3.2%でした。理想の回路なら出ない組み合わせが、実機では混じりました。
状態の準備、操作、読み取りなどのどこに原因があったかは、この結果だけでは特定できません。

3枚につないだら、976回がそろった
さらに3つ目の量子ビットを使い、1つ目のH、1つ目から2つ目へのCNOT、2つ目から3つ目へのCNOTの順に並べ、最後に3つを測定しました。最初に0に準備された状態から、理想的には「3つとも0」と「3つとも1」が出る回路です。これも1,000回実行しました。
| 結果 | IBM画面の表示 | 回数 |
|---|---|---|
| 3つとも0 | 0000 | 497回 |
| 3つとも1 | 0111 | 479回 |
| そろわなかった組み合わせ6種類 | 0001〜0110 | 合計24回 |
| 合計 | — | 1,000回 |

そろわなかった内訳は、0001が1回、0010が2回、0011が2回、0100が3回、0101が4回、0110が12回です。この回も画面の表示は4桁です。右端から3桁が今回測定した3つの結果で、右端からq[0]、q[1]、q[2]の順に読みます。
3つがそろった回数は497回と479回を合わせて976回、97.6%でした。そろわなかったのは24回、2.4%です。
3枚のほうが正確だった、と決めつけない
今回の記録では、2枚がそろった割合は96.8%、3枚では97.6%でした。しかし、それぞれ1回ずつ実行した結果です。この違いだけで「量子ビットが増えると誤りが増える」「3枚のほうが正確」とは言えません。
実行ごとのばらつきや、装置のどの量子ビットが使われたかも関係する可能性があります。今回の差の原因は未確認です。この割合を、装置全体の性能や、量子もつれの品質を表す数字とも扱いません。
今回記録したこと
- 2つをつないだ回路では、1,000回のうち968回、結果がそろいました。
- 3つをつないだ回路では、1,000回のうち976回、結果がそろいました。
- 理想の回路なら出ない組み合わせも混じりました。原因の特定や、量子もつれを証明する追加測定は行っていません。
量子ビットそのものは「量子ビットって何?」、誤りへの取り組みは量子エラー訂正の記事で説明しています。今回の実行は、エラー訂正を試したものではありません。
実行の記録
- 実行日:2026年10月14日
- 装置:ibm_marrakesh(画面表示:156量子ビット、Heron r2)
- プラン:IBM Quantum Platform、Open Plan(open-instance)
- 回数:2量子ビットの回路と3量子ビットの回路を各1,000回
- 装置の使用時間:画面表示で、どちらの回路も2秒。送信してから結果を受け取るまでの時間とは区別します。
- 結果の数字は、実機のジョブの結果として記録されたものです。回路編集画面のシミュレーションとは区別しています。
今回の用語集
- H:0に準備した量子ビットから、測定で0と1が半分ずつ出る状態を作る操作です。
- CNOT:制御側の量子ビットが1のとき、標的側の量子ビットを反転する操作です。
- ベル状態:2つの量子ビットで作る、基本的な量子もつれの状態の1つです。
- 測定結果の相関:複数の結果の間に見られる関係です。結果がそろうという事実だけで、量子もつれの証明とはしません。
出典
- 筆者のIBM Quantum実行記録・結果画面(2026年10月14日)。この記事の実測値の出典です。
- IBM Quantum Learning, Quantum mechanics basics(2026年10月14日確認)。HとCNOTで作るベル状態、理想的な測定結果。
- IBM Quantum Documentation, IBM Quantum Composer(2026年10月14日確認)。回路と実機実行、シミュレーションとの区別。
- IBM Quantum Documentation, CHSH inequality(2026年10月14日確認)。測定の向きを変え、量子の相関を検証する例。今回、この検証は行っていません。
更新履歴
- 2026年10月16日:じいじのやわらか解説を短縮し、用語とCHSHの補足の配置を見直しました。重複する本文を一部整理しました。今回の確認範囲は、この変更と表示です。既存記事全体の事実を再調査したものではありません。
- 2026年10月16日:じいじのやわらか解説と「今回出た言葉」を追記。今回の確認範囲は追加した説明と配置です。既存記事の事実全体を再調査した日付ではありません。
- 2026年10月14日:2量子ビット・3量子ビットの回路の実行結果と、この記録からは結論づけられない点をまとめました。